こぼれ話


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その527 夏と秋の間 2022.9.8

2022/09/08


 今年は梅雨明けが早かったので夏が長かった。
コロナの感染拡大もあってさらに長く感じたが、
ようやく最近は朝夕に秋の気配を感じるようになった。
ウスキキヌガサタケというキノコがある。
私がよく行く七ツ淵神社への道では
7月の梅雨明けの頃に見かける事が多いが、9月に入った先日、3つほど見つけた。
ホワイトアスパラガスのような軸に
鮮やかな黄色の網目の笠がパラシュートのようにかぶさっている、
笠の直径が10センチほどのキノコである。
 
 参道にはすでに先客がおられて、このキノコの写真を撮っていらっしゃる。
「どちらから?」「ええ、高知市内からです。」といった会話の後、
「9月でもこのキノコが出るのですか?」とお聞きすると、
「よく見つかるのは7月だけど、6月から10月頃まで見られますよ。」とのことだった。
人の鼻にはわからないが、ある種の芳香があるらしく小さなハエが黄色の笠に寄ってくる。
写真に撮って、神社に向かう。
 
 天気は悪くないが南方海上の台風の影響で前日は雨が降ったようだ。
神社のベンチは湿っている。
パンパンと手を打ってお参りを済ませた後、五十円也のおみくじを引く。大吉であった。
人生良いことばかりではない。楽あれば苦あり。
信じて行えば道は開ける。といったような内容であったと思う。
 
 帰りの参道で、もう一度ウスキキヌガサタケを見たが、すでに傘は張りを失いはじめていた。
数時間で最も良い時が終わってしまうこのキノコ。
はかないと思ってしまうのは人間の勝手だろう。
 
 稲の実る田んぼの脇には竹竿の先にとまる赤とんぼがいた。
カメラを構えて近寄るとトンボは飛び立ってしまうが、
この竹竿はお気に入りのようで、もう少し近付いて待っているとまた彼はとまりに来る。
 
 小川の流れるところまで帰ってくると、
鮮やかな緑の胸、水色の腹部が目立つギンヤンマが
水面すれすれに飛んできて、一瞬止まって産卵をする。
子供の頃、学校のプールに飛来したギンヤンマには
クラスの全員が視線を束にしてその軌跡を追ったことだった。
 
 今日は帽子を忘れたので、タオルで海賊のように頭を包んで登ってきた。
額から目に汗が落ちてこないのは快適だが、タオルの濡れ具合は著しい。
親父がそんな恰好をして、先割れの竹竿で田舎の実家の柿を取っていたことを思い出した。
あなたが若くして逝った歳より10年と少し、年上になりました。
どこかで見ていますか。