こぼれ話


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その526 録音 2022.6.10

2022/06/10


 私が年1回担当する大学の授業はまだ対面ではなく、リモートの講義が多いようだ。
私の講義は以前はプリントを配って、黒板やホワイトボードに
板書しながらしゃべるスタイルだった。
2年前から、学生のいない教室で行った講義を録画していたが、
今年はパワーポイントに音声を録音する方式にした。
 
 いわゆるプリントとなる資料も使うが、スライドはかなり変更が必要になった。
以前なら説明の図などはホワイトボードにチャチャっと描いていたものが、
パソコンでマウスを使ってお絵描きしなくてはならない。
 
 さらに問題は録音である。
スライドを読んだり解説を加えるのだが、よく「とちる」。
普通の講義であれば言い直すのだが、録音で残るとそうはいかない。
何度もやり直すことになる。
口を開ける時や、つばをのむ音も録音されてしまう。
これはとても耳に不快。うまく話せてるな、と思ったら電話が鳴る。
内容を強調したいとき、しゃべりながらマウスで操作する
ポインターや線引きはタイミングがずれるし、線がゆがむ。
黒板に赤いチョークで丸を入れたり下線を引くようにはいかない。
 
 1日に録音が進むスライドは2-3枚といった状況だったが何とか終了。
最後に「長時間の聴講お疲れ様でした。」と入れたが自分へのお疲れ様も含んでいる。
 
 吉村昭の「長英逃亡」によると
蛮社の獄で捕えられていた高野長英は、牢の火災に乗じて逃亡する。
庇護者をたより、オランダ語の医学書などを
日本語に翻訳して生活の糧を得ていたという。
しかし著作権や版権などの概念がない時代、
長英の翻訳本はすぐに写本され、今でいう海賊版が出回るため貧乏な生活が続く。
妻子を養うため、硫酸で顔を焼いて人相を変え名前も変えて町医者を開業する。
そこそこ繁盛していたのだが、
密偵に昔の名で呼ばれて振り返ってしまい、と話が続く。
 
 デジタル時代の現代は、情報が簡単に複製できて多くの人々の手元に簡単に届く。
素晴らしい技術の進歩だと思う。
私のつたない講義が将来の赤ひげ先生のために少しでも役立つことを願っている。