ちゃぶ台返し

2009/10/29

巨人の星、飛雄馬のお父さんはちゃぶ台返しがトレードマークだ。
「父ちゃん!!」と叫ぶ飛雄馬。ああっと顔をおおう明子姉さん。
そんな情景は現代では見られなくなったが、
古くは夏目漱石もその傾向があったようだ。

 

漱石の妻、鏡子さんは悪妻の典型のように言われる。
漱石がイギリス留学中から神経症かうつ状態であったことは知られている。
しかし鳥越碧著「漱石の妻」によると、家庭における発作的な癇癪や、
病状の悪い時の妄想、幻覚は相当なものであったようだ。
また、そのことが彼の弟子たちにはまったく知られておらず、
物書きである彼らが、鏡子悪妻説の元になったようだ。
物事は外側から見るのと、内側で体験するのとでは大きな違いがある。

 

ところで、うちの文鳥はちゃぶ台返しをするのですよ。
ヒナの頃からもう6年になるが、青物が大嫌い。
食べないものはしょうがないと、好きな餌ばかりやってきたせいか、
ここ数年、足が弱った。

 

少し古びた鳥かごを新調するにあたって、家内は鳥屋さんに行って大分説教されたらしい。
食べないからといって甘やかし、体を弱らせるのは飼い主の責任、と。
そして鮮やかな水色と緑のビタミン系の餌を混ぜるように言われたそうだ。

 

餌入れに毒々しげにも見える原色の顆粒が混在し、文鳥はとまどっていた。
数日はかなりひもじい思いをしたようだが、
その後しぶしぶと餌をついばむ姿が見えるようになった。

 

ある朝、籠をのぞくと餌入れがひっくり返っている。
ほとんどの餌は床にばらまかれており、
文鳥は床に散らばったいつもの餌をついばんでいた。
水色と緑は簡単によけられる。
これぞまさに、気に入らぬおかずに腹を立てた星一徹の姿、と感心した後、
顔を洗ってもう一度見ると、餌入れはひっくり返った状態から元に戻っている。

 

ペットは飼い主に似るという。
私も怒鳴ってしまうことはあるが、
その後たいてい先に「いや、さっきは言いすぎた。」
とひっくり返したちゃぶ台を元に戻すのである。


コメント

文鳥は、当初、餌入れを90度倒してから元に戻していたのだが、最近は180度全返しをして、知らんふりをするようになった。
やってみたいけれど、後片付けが面倒そうだな。