ロ短調ソナタ

2014/09/11

先日、東京出張の際に、外山啓介ピアノリサイタルを聴きました。
通常の演奏会より少し早い、午後6時の開演。
リサイタルに付けられたタイトルは、favorite piano sonatas(お気に入りのソナタ)ということで、
前半はモーツアルトのロンドとソナタ第11番トルコ行進曲付き、ベートーヴェンの悲愴ソナタでした。

 

最初のロンドはイ短調で、切ないまでの美音がホールに満ちていきます。
トルコ行進曲のソナタも、瑞々しく丁寧な演奏でした。
ベートーヴェンの悲愴は、モーツアルトと同じく、
有名な第2楽章がゆったりとつややかに演奏され、とても良かったです。

 

客席は、期待した通りの演奏に満足、という雰囲気でした。
私の個人的な印象では、欲を言えば新鮮さやちょっとした驚きも欲しいかな、といった感じです。
前半がオーソドックスなプログラムであったためでもあるでしょう。

 

休憩に入り、後半の予告ベルが鳴った後、しばらく客席の照明が点けられたままです。
演奏会の休憩は特に女性には短く、ロビーに長い列ができますから、
ちょっと長めに時間を取るのかな、と思っていると、
ホールの上の方から「ほーっ」「ふわーっ」という歓声が聞こえました。
ほどなく温かい拍手がわき起こり、「みちこ様」「みちこ様」というささやきが聞こえます。
私の席は1階席の最後方でしたが、周りの人が前に出て、2階席を見上げています。
あまりそういう行動につられない私ですが、思わず通路に出て後ろを見上げました。

 

2階席の最前列には、穏やかに微笑まれ、
会釈をしながら着席されようとする美智子皇后様がいらっしゃいました。
スポットライトが当てられたように、そこだけが白く輝くように見えました。

 

後半は会場の雰囲気がピリッとした高揚感につつまれました。
プログラムはリストの「愛の夢」とロ短調ソナタ。
ピアニストはこのサプライズを、おそらく知らされていたでしょうけれど、
前半とは明らかに演奏のテンションが異なります。
「愛の夢」はたっぷりと感情移入された演奏でした。

 

本日のメイン、ロ短調ソナタは30分を超える大曲です。
複雑なパッセージとパワフルなオクターブの跳躍を要する部分がちりばめられ、
その間には精神の集中を要するピアニッシモが配置されています。
外山氏の演奏は、超絶的なテクニックはもちろんのこと、微細な陰影の表現も多彩で、見事な演奏でした。

 

ロ短調ソナタの最後の消え入るような一音、低音の余韻が振動を止めるまで、
ピアニストと美智子皇后様、聴衆が息をつめていて、真空に身を置いたかのようでした。


コメント

長崎国体の開会式に出席された 天皇、皇后両陛下をテレビで拝見しました。
やはり気品のあるお姿でした。
いつまでも、おすこやかであっていただきたいと思います。